鏡の中のゾンビ [普通が奇跡]
無事に退院して、
これでようやくゆっくりできる。
というので、しばらくは寝てばかりいた。
体力がないので料理をする元気がない。
ほとんど、お弁当とか出来合いのもの、
自分用には、病人食専門の冷凍弁当を購入して、
それを食べていた。
病室で病人食のカタログを見ていたら
担当医師から、そんなもん注文しなくていいよ。
塩分に注意さえすれば、
あとは何を食べてもいいから。
といわれていたが、
食事を作るのが面倒だったのだ。
まずくはなかったが量が極端に少ない。
しかし、
朝から、あれほど食べたかったパンを食べまくり、
珈琲を飲みまくり、
それまでめったに食べなかったフルーツゼリーなど
口当たりのいい高カロリーのものを食べて
44キロだった体重が、
たちまち61キロになってしまった。
鏡を見て、ぎょっとした。
そこに見慣れぬ婆さんがいる。
しかも、ゾンビそっくりの無表情。
数か月、いや一年以上かな、
鏡を見るたびに
「あんたは誰?」
とつぶやくようになった。
退院まで [普通が奇跡]
紫陽花が美しい季節。
なんかおかしい状態ながら、
少しずつ回復して、
退院前の外泊も決まった。
このころから、
体力をつけるために、
連れ合いがお見舞いに来た時は、
外出許可を得て、
病院の周辺、公園などを散歩することにした。
歩くときは、
連れ合いとしっかり腕を組んで歩く。
筋肉と体力が落ちていて、
絶えず体がふらふらしているからだ。
この時も感覚がなんか変だと
へらへら笑ったりした。
でも、病院の外を歩くのは、
快感!
と叫びたくなるほど気持ちが良かった。
オレンジ色のスカート なんかおかしい4 [普通が奇跡]
入院している間に
なんか精神状態が少しおかしくなった話は、
退院してから
娘やちびっ子たち、弟夫婦にも
こんなことがあったのよと
詳しく話したのだが、
面白がるかと思ったら、
全員が完全に引いていた。
笑ったのはわたしだけ。
二度目の転倒 なんかおかしい3 [普通が奇跡]
ここ数日、あきれるほど寒い。
朝、玄関を開けて外の空気を吸って
まるで冬景色のような雰囲気に
笑ってしまった。
何で笑うの?
う~ん。
変化に意識が追い付かないから、
おかしくて笑いたくなったんだけど、
普通は、笑うことじゃないよね。
もともと
なんかおかしいひとだったの?
・・・・・わたし。
最近、そんなことにようやく気付いた。
ともあれ、なんかおかしくなって、
入院54日目の深夜にまたしても派手に転んだ。