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鏡の中のゾンビ [普通が奇跡]

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無事に退院して、
これでようやくゆっくりできる。
というので、しばらくは寝てばかりいた。


体力がないので料理をする元気がない。

ほとんど、お弁当とか出来合いのもの、
自分用には、病人食専門の冷凍弁当を購入して、
それを食べていた。


病室で病人食のカタログを見ていたら
担当医師から、そんなもん注文しなくていいよ。
塩分に注意さえすれば、
あとは何を食べてもいいから。


といわれていたが、
食事を作るのが面倒だったのだ。
まずくはなかったが量が極端に少ない。


しかし、
朝から、あれほど食べたかったパンを食べまくり、
珈琲を飲みまくり、
それまでめったに食べなかったフルーツゼリーなど
口当たりのいい高カロリーのものを食べて
44キロだった体重が、
たちまち61キロになってしまった。


鏡を見て、ぎょっとした。
そこに見慣れぬ婆さんがいる。
しかも、ゾンビそっくりの無表情。


数か月、いや一年以上かな、
鏡を見るたびに
「あんたは誰?」
とつぶやくようになった。

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ステロイド剤の影響で顔が満月のようになる
と聞いたことがあったが、
病院では顔がむくむことはなかった。
何回か写真を撮ってるのだが、
体重の変化が顔に出ることはなかった。
能天気に笑っている。


ところが、退院してから顔がむくみ
歪んで、別人のようになった。
お隣の奥さんが、
「あら、お顔が・・・」
と驚いて振り返ったほどだ。


自分でも太ってむくんでいるうえに
無表情だから不気味なのだ。
と思っても、笑顔になる元気がでない。


疲れ切っていて寝てばかりいて、
食べて、薬を飲んで、寝るの繰り返しである。
一週間に一度は病院に行く。


そんな状態なのに、
弟のところに預けていた頑固ばあさんが
戻ってくることになった。


わたしは退院後せめて一か月くらいは
休みたいと思ったが、
年老いた母親にそんな理屈は通用しない。
わたしが退院したと知って、
やはり我慢の限界に来たようだ。



「毎日、判で押したように
自分の荷物をまとめると、
これから東京に帰るといって
勝手に家を出ていってしまうんです。
もう、危なくて、危なくて」


そんな話を聞いたら切なくて、
もう少し我慢しろとは言えなくなった。


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数か月振りに頑固ばあさんが戻ってきて、
いくらもしないうちに、
頑固ばあさんの食欲が落ちて、
どうしたのかなと思っているうちに、
様子がおかしくなり、
かかりつけの病院に電話をすると
すぐに病院に連れてらっしゃい
とせかされた。


連れ合いと二人で
車に抱きかかえるようにして乗せ
病院に行き、看護師さんを呼ぶと
「こういう緊急の場合は、救急車を呼びなさい」
と叱られた。


緊急の事態とは思ってなかった。
高齢者は、具合がわるくなると。
一気に悪化するのだといわれた。


それまで持病もなく、
丈夫だったので油断していた。


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さいわいにも婆さんは、
食欲がなかったための水分不足で
脱水症になっていたのだ。



点滴ですぐに元気になったが、
わたしが退院したばかりで、
看病もろくにできないというので
10日間ばかり入院することになった。


これがのちに続く
悪夢のような日々のはじまり
だったかもしれない。


写真は6月22日、雨の中で撮影したもの。
すべてご近所の庭先などに咲いていた紫陽花。




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コメント 3

緑

自分の体が悪い時おかさあさまの面倒見るのはそれは
大変ですよね。

紫陽花の綺麗な時期になってますね。
カシワバアジサイも存在感ありあります。
by 緑 (2019-06-28 06:41) 

夏炉冬扇

大変ですね。
何のお役にも立てませんが。
by 夏炉冬扇 (2019-06-28 07:21) 

ぼんぼちぼちぼち

むくんだお顔を鏡で見るの、お辛いでやすよね。
あっしも若い頃、顔やせの努力を間違ったことを続けてしまっていて、ブルドッグのようにむくんてましまってて辛かったでやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2019-06-29 14:19) 

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