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頑固婆さん、月を見る [人生]

ツユクサとチョウ.jpg
近所で見かけたツユクサ、小さいけれど、この青が目に飛び込んでくる。



ひとは年齢を重ねるに従って、情緒的になってくるのか、
それとも単に自分の時間があまっているのか、
常識的に考えれば、その両方がかかわっていると思うのだが、
年をとるにつれて、花や自然の光景を愛でるようになってくる。


さまざまなことを学習しなければならない時期に、
普通の能力しかない人間がのんびりと、
花や自然の光景を愛でていては、
高校受験や大学受験、しいては就職もうまくいかない。



こどもが月を眺めて溜息などついていたら、
さてはいじめか、何か悩みごとがあるのかと心配になる。
思春期だと、まあ、初恋とかそんなもんでしょう。
なかには未来の植物学者や天文学者の卵もいたりする。


ツユクサ2.jpg


大人が月をみて、きれいだといってるぶんには、
どうということもない。



しかし、昨年あたりから、
頑固婆さんがしきりに月を見るようになった。


電話でも、今夜の月はきれいだったとか、
雨も降っていないのに、月が出ないとか、
そんな話題がふえてきた。



以前は、政治とか世界情勢とか、異常気象とか、
個人ではどうにもならない話題をとりあげて、
ああだこうだとどうでもいいことを一席ぶちたがるので、
これも年老いて急に上から目線で偉そうなことを言いたがる
典型的な老化現象だなあと閉口していたので、
話題が情緒的になって、少し気が楽になった。


と思っていた。


ところが、それが次第にエスカレートしてきて、
最近は、何時ごろにこのあたりに出て、
何時ごろにはこの辺に移動していて見えなくなるとか、
買いものの帰りに、この方向に出ていたのに、
家の近くに来たら、全然どこにも見えなくなったとか、
夏と冬では、出る場所がかなり違うのよねえとか、
これは現象としてはあたりまえのことなのだが、
やけに詳しく話すようになった。



わたしは、それが不快でならないのだ。


田舎に行った時も、夕方不意に姿が見えなくなる。
どこに行ったのかと思うと、
ふらりと帰ってきて、月を見てきたという。

ときには、お前もおいで、すごくいいお月さまだよ
と強引に月見に誘う。



なぜ、不快かというと、
なんだか、頑固婆さんが月の世界、
あの世に心ひかれているようで、気味が悪いのだ。
あれこれ悪い想像が働いてしまう。
それがいやなのだ。



やっぱり、本人がなんといおうと、頑固婆さんには、
110歳くらいまでは頑張っていてほしいのだ。


ツユクサ3.jpg


というわけで、
「わたし、お葬式なんかやるの面倒臭くて大嫌いだからね。
最近忙しくて、そんな時間もないって感じ。
だから、お母さんもとうぶんは死なないように注意してよね」
というのが、親子の会話の締めくくりの定番となっている。







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nano

訪問nice!ありがとうございますm(__)m
by nano (2010-11-07 16:24) 

夏炉冬扇

今日は。
昨日は100歳のおばぁさんが小学校の遠足の歌というのを歌ってくれました。ありがたいことでした。
by 夏炉冬扇 (2010-11-08 11:45) 

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