田舎散歩2 [人生]
田舎散歩でみかけたこの可愛らしい花は、ウィンターコスモス。
名前もかわいらしい。
アサガオの先、
もっと海に近い家の脇に咲いていた。
ところで、頑固婆さんは、
老いが深まってますます頑固になった。
家に着くと、なんか変な臭いがする。
台所に行くと、悪臭が漂っている。
「何か、腐ってるよ、何だろう」
と流し台の周りをうろうろしていると、
頑固婆さんが、打ち明け話をはじめた。
「実は、卵をゆでて、それをすっかり忘れて、
このあたり一面、白い煙がもうもうとなっちゃったの。
火災報知器だかなんだか、音がなりだして、
それでも、わたしはなにがなんだかわからなくて・・・・」
と決まり悪そうに笑う。
「ええっ、それでどうしたの」
「ガス屋さんに電話して来てもらったら、
来るなり、うわあ、この煙はなんですかって、
窓とという窓を全部開けて、煙をだして、
それから音をとめてもらったの。
ついでに、お風呂と客間のファンヒーターのタンク、
石油を満タンにしてもらったから、
あんた寒かったら、どんどん使っていいから」
と妙に恩着せがましく、話の視点を微妙にずらす。
老いが進むにつれて窓も戸も閉め切り、
なんだかんだと理屈をつけて、窓をあけようとしなくなって、
カビ臭くなるからと窓を開けまくるわたしと、
毎回喧嘩になるのに、
この日は、珍しくあちこちの窓があいていたので、
変だなあと思ったら、そういうことだったのだ。
いくら、窓をあけはなっても、
匂いに敏感なわたしの鼻をごまかすことは、
できなかったのだ。
もう、そろそろ限界でしょう、いい加減に独居はやめて、
わたしたちと同居したら、といつもの話を持ち出すと、
「いっときますけどねえ、わたしはぼけてませんから、
絶対に!
ぼけてませんからね」
あとは拒絶の姿勢である。
2日目、またしても、お互いにどなりあう大喧嘩をした。
ノートパソコンでメールを見ていたわたしのところへ、
頑固婆さんがやってきて、
「あんた、わたしのお針箱、どこかへやった?
いつもの場所にないんだけど、
もしかしたら、あんたが使ってどこかにおかなかった?」
という。
「わたしは、ここにきて針仕事はしておりません」
「しなくても、箱を動かさなかった?」
「とにかく、見ても、触ってもいません」
「でもねえ、いつもあるところにないのよ」
「おかあさんが使って、どこへ置いたか忘れたんでしょ」
「いや、わたしは使った覚えはない」
「だから、それが老化だっていうの」
「絶対に違う、あんが動かしたんだよ」
「わたしが来るそうそう針仕事なんかしますかっていうの、
してるの見たの? 見てないでしょ。」
「この家にいるのは、あんたとわたしだけなの。
わたしは使った記憶がないんだから、あんたに決まってるじゃないの」
「いい加減にしてよ」
頑固場さんは若い時から、何かあるととりあえず、
他人のせいにするという悪い癖がある。
しかも、しつこい。
「わたしじゃないって、何回言えばわかるの」
「だって、あんた以外にだれがやったっていうの」
「ばあさんが、自分で忘れてるの」
「絶対にわたしじゃない!」
「勝手にすれば」
大声でどなりあって、決裂したのである。
翌日の夕方、
決まり悪そうな表情で、
「あの、お針箱、ベッドのこちら側にあった。
自分でそこにおいたの忘れてた」
ほら、みなさい。
しかし、わたしも同じようなことをやってしまった。
「今日の新聞、どこへやったの、
わたし、まだ読んでないのに片付けないでよ」
と大騒ぎして、隣の部屋に放り出してあった新聞を見つけ、
見てみるとすでに読んだ内容で、
そこへ放り出したままにしていたのも自分だった。
「わたしも、婆さんと同じことをしてしまった」
と打ち明けて、二人で大笑いしてしまった。
こういうことがあるので、、
婆さんがますます自信満々になってしまうのだ。
「わたし思うんだけど、田舎のお婆さんよりも、
お父さんやお母さんの方が先にぼける気がする」
と娘が口癖のようにいったりするので、
「お父さんは確かに、頑固婆さんよりもぼけている気がするけど、
わたしはぜんぜんぼけてませんから」
と娘に反論しながら、
その口調が自分でも頑固婆さんに似ている気がして、
ぞっとしたりする。
今日は。
ぞっとせずに。親子ですから当たり前。
親が亡くなって気づくこと多々です。
by 夏炉冬扇 (2010-11-04 16:31)
俳優の名前が出てこない。
アイウエオを辿って思い出そうとする。
なんとか思い出して・・・
やっとスッキリする。
記憶ってモノは忘れる為にあるって誰か言わなかった?
by lamer (2010-11-05 14:33)