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わたしをなんだと思ってるの! [人生]

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頑固婆さんとの会話

その1

父の法事でお寺のきつい勾配の階段
(註:わたしでもちょっと危ないなあ、と身構えるほど)
をおりるとき、当然のように80歳をすぎた母の手をとった。
すると、母はきつい口調でわたしにこういった。
「あんた、わたしをなんだと思ってるの?」


わたしはすまして、こう答えた。
「80を過ぎた婆さんだと思ってる」
憤然とした様子の母に、さらに追い打ち。
「違うの?」
仕方なく母は黙ったが、悔しそうだった。
とにかく自分では年寄りだと思っていないらしい。



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その2

「田舎にもデイサービスというのがあるんでしょ」
とわたし。
「ある、ある、お隣の奥さんにしつこく誘われたけど、断った」
(註:お隣の奥さんというのは、母よりも7歳か10歳か年下である)
「なんで?」
と不満を押し隠したわたし。
「だって、年寄りが集まってお風呂に入ってぐだぐだしているだけだよ。
どこが面白いのよ。わたし、そういうの大っきらい!
それに、大勢の人間が入るお風呂より、自分家のお風呂のほうが、
ずっと清潔じゃないの、といってやったの」
なぜか、勝ち誇ったような表情を浮かべる。



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その3

「家政婦さんに来てもらうということもできるのよ」
とわたし。
「わたしはね、他人に猫なで声でおばあちゃん!なんて
話しかけられるの、大っきらい!
それに、他人を信用する気になれない」
憎々しげに言い放つ、頑固婆さん。
「でも、なんかあったらどうするのよ」
「なにがあるっていうのよ」
すでに自尊心を傷つけられたという口調になっている頑固婆さん。

「あんたはそういう年齢なんですよ」
と厭味ったらしくわたし。
「せめて、一日に一回くらい、誰かに来てもらうとかしてよ。
心配で頭がおかしくなっちゃう」
ほとんど懇願口調になる。

しかし、頑固婆さんはすました顔で、
「誰かに来て貰うと、気を遣うじゃない。
変な格好をしているわけにもいかないし。
わたしはそれがいやなの。
はい、もうこれで、この話はおしまい」
とりつくしまなし!



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その4

週に一度、高齢者用のお弁当を頼んでいる。
これが唯一のわたしの気休めになっているというのに、
田舎に行くたびに、頑固婆さんはお弁当を止めたいという。

「老人用に作られているから薄味で、まずい」
と、これまた憎々しげにいうのだ。

わたしが何度かかわりに食べさせられたが、
値段のわりに量もたっぷりあって、普通においしい。
要するに老人扱いが気に入らないのだ。
週にたったの1度だよ。
なのに、「自由にスーパーで買うお弁当のほうがいい」などという。
わたしには、意地悪をいいたくて言ってるとしか思えない。



毎回、お弁当の配達と、空になったお弁当箱を回収に人が来る。
つまり、週に2回は、誰かが頑固婆さん宅を訪れるわけで、
そのとき様子がおかしければ、救急車を呼ぶなりなんなりしてくれるだろうと
わたしはそれにすがっている。
週に1度のお弁当は、わたしにとって、細い細い蜘蛛の糸なのだ。



毎回そうやって説得しているのだから、
こちらの心情を知っているくせに、
いけしゃあしゃあと毎回そんなことをいうのだ。
張り飛ばしてやりたくなる。
そんなわたしの反応を、頑固婆さんは嬉しそうに笑っている。



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腹は立つけど、頑固婆さんはわたしの自慢の母親である。


写真は、ご近所でいまが盛り、いや、もうおわりかけているハナミズキ。
頑固婆さん、お気に入りの花だが、
「下から見上げるしかなくて、花がよく見えないのよね」


というので、小さな木に咲いているのを接近して撮影。
接近したら、あら、何だか、思ったよりたくましい印象を受けた。
芯が強い、しっかり者の長女、という感じかな。


(あ、ちなみにわたしは次女だからね)









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アヨアン・イゴカー

親子の会話、とってもいいですね。離れていれば、特に心配でしょうからスーさんのお気持ち、とてもよく分かります。お母様の心理も、痛いほど分かります。
by アヨアン・イゴカー (2010-05-01 14:50) 

かのん

背景と意味は違いますが...本日小2に向かって、記事タイトルと同じようなセリフを言いました...(苦笑)
by かのん (2010-05-02 00:35) 

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