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不倫の行方 3 [恋愛・結婚]

記憶が錯綜している。
娘の夜泣きで、子供のいない夫婦と親しくなった
ことは事実だから、
あれは、娘がまだ1歳~2歳のころの話なのだ。


とにかく、出たり入ったりが多いアパートだった。
地方から東京の本支店勤務になって、
2~3年で、また出て行く家族が多かったし、
離婚だ、なんだで引っ越す家もあった。



しばらくして、引っ越してきた一家があって、
そこの奥さんが、若くてものすごい美人だった。
松阪慶子を女学生にして、
もっと内気にしたような、
肌が抜けるように白く、
いかにも純情無垢といった風情で、
説明の仕様がない美人。


以前の記事「美人と歩く」の美人は、薔薇の美しさだが、
この女性は、くちなしの花のような、芙蓉の花のような、
どこか可憐な、日本的な美人である。
たちまち、みんなのアイドル的存在になった。


女性も美人には弱いのだ。
そして、美人は性格もいい。
意地悪をされたことがないし、
いつも周囲の人間に可愛がられているから、
ひねくれようがないのだ。


このひとが買い物などで、外に出てくると、
自然と主婦が取り囲んで、はなさない。
彼女を質問責めにするのだ。
まるで、スターを取り囲むファンである。


わたしは、若かったから、
ベテランの主婦にはじき出されて、
遠巻きにして、見ているだけである。


話が佳境に入ったころ、
そおっとちかづいて、耳を傾ける。
美人が妊娠した若妻であることが判明した。
いつも、父親のような男性と一緒にいたが、
それが、夫なのであった。


いま、思い出しても、老人でしかない。
あれで、50代だったのだろうか。
わたしには、60代か70代にしか見えなかった。
ある会社の役員だということだった。
来ているスーツが超のつく上等品であることしか、
印象に残っていない。
どう思い返しても、よぼよぼ寸前の男だった。


みんなが事情を聞きたがり、
案外早く、彼女は事情を話してくれた。
もちろん、外で5~6人の主婦に囲まれて、
無防備な立ち話で。
本当に、世間知らずなうぶな女性だった。
当時のわたしですら、そう思ったほどだ。


彼女は、会社役員をしていた現在の夫の秘書だった。
つまりは、社内恋愛、不倫の恋だった。
彼女は、真剣に恋愛していたつもりらしいが、
わたしから見れば、エロ親父にたらしこまれたのだ。


二十歳を過ぎるころから、
愛人タイプの女性が見分けられるようになっていた。
何でかわからない。
これは、わたしが唯一自慢できる才能だろう。
もち肌で、抜けるような白い肌の女性で、
どこか頼りない、エゴの弱さが表に出ている美人が、
確かめてみると、たいてい中年男の愛人になっている。
男心をそそるものを持っているのだろう。


彼女も典型的な、それだった。
しかし、飛び切り上品で、もったいないほどの美人。


彼女の家族も、相手の家族も大騒ぎをして、
二人を別れさせようとした。
「でも、彼は、何もかも捨ててわたしを選んでくれたの」
と彼女は、頬をほんのり薔薇色に染めて、
嬉しそうに告白した。
「家も財産も、すべて奥さんと子供に渡したの」
どう? 立派な男性でしょう?
という、可愛い表情。
彼女は、勝利者なのであった。
勝利者であることに、酔っていた。
おまけに、彼の子供まで身ごもっているのだ。
幸せのオーラで、彼女は光り輝いていた。


この日を境に、彼女は孤独になった。
それはそうでしょう、
不倫の勝利者って、主婦の天敵ですからね。
そんなことにも彼女は気づかないのだった。
なんという幼さ。
(美人でなかったら、バカというところだが)


やがて、彼女は玉のような男の子を産んだ。
わたしは、抱いているのを見せてもらったが、
男の子だから、世間でよく言われるとおり、
母親似の、美しい赤ん坊だった。


この話、まだ次回に続きます。


タグ:不倫
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人を不幸にして得た幸せは、茨の道だ!(笑)
天晴れ!美人○カさん。
by (2006-09-27 06:35) 

m-t

>「家も財産も、すべて奥さんと子供に渡したの」
どう? 立派な男性でしょう?
という、可愛い表情。
彼女は、勝利者なのであった。

私は立派だとは・・・思えない。
何十年・・・積み重ねてきたものを簡単に壊す事の出来る人が立派???
そんな男性好きになれない愛せないよ
その女性もそんな事を望んでた???
おかしいよ・・・
by m-t (2006-09-28 00:14) 

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