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空にあこがれて [映画・演劇]

年賀状も発売されて、落ち着かない季節になった。
なんだかあわただしくて、
空への憧れを持て遊ぶ心境になれない。
時よ、もう少しゆっくり歩いてよ、といいたくなる。


さて、今回は空飛ぶ少女の続き。



映画『FLYBOYS』と同じ時期に、
フランス空軍に志願した日本人がふたりいた。
一人は、バロン滋野といわれた滋野清武(大尉)と、
磯部鉄吉(中尉)、二人ともその活躍に対して
レジオン・ドヌール勲章を授与された。
とんでもない命知らずがいたものである。
フランス軍に加勢しようという気持ちではなく、
二人とも、飛行機に乗りたくて入隊を志願したようだ。


浮世を離れて空を飛んでいたら、どんなに気持ちがいいだろう。
1972年に、ニューヨーク、パリ間の大西洋単独無着陸横断飛行で、
一躍アメリカの英雄になってしまったチャールズ・リンドバーグも、
もっぱら「星の王子さま」の作者として知られてる
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリも、
空の孤独を愛してやまなかった人物と思われる。


飛行機が生まれる前後と、うまれて30年くらいまでの、
飛行機にまつわる人物には、非常に魅力的な人間が多い。
連れ合いの書籍を盗み読んで、わたしはこのころまでの飛行機と、
飛行機乗りと、飛行機つくりたちに魅了されてしまった。


とにかくスケールの大きい、変人奇人命知らずが多い。
第一次大戦の空中戦には、フランスには、ギンヌメール、
ドイツには、レッドバロン(赤い男爵)とよばれたリヒトホーヘンがいる。
どちらも、天才肌の撃墜王と呼ばれた戦闘機乗りで、
ギンヌメールは23歳、リヒトホーヘンは25歳で、
空中戦のさなかに戦死している。


大体、このあたりの話は飛行機好きの限られた人しか、
知らないのだが、ここで大勢の人に教えるのがもったいないほど、
このふたりが、ものすごくかっこいい。
ふたりとも憂いを含んだ微笑が印象的な、美青年。
レッドバロンは、実際にプロシャ貴族で男爵の長男である。
そんじょそこらの映画スターなんかより、ハンサム。
このふたりに関しては、わたしはただのミーハーと化してしまう。


『翼よ、あれがパリの灯だ』は、リンドバーグの、
大西洋単独無着陸横断飛行を決意するまでと、
協力者を見つけて、飛行機を手に入れ、
単独で,ニューヨークを飛び立って、
睡魔やエンジントラブルと闘いつつ、パリに到着して
無事着陸するまでを、抑制の利いた無駄のない文章で書いた
感動の体験談だが、
それを原作にして作られた映画で、リンドバーグを演じたのは、
なんと当時40歳をこえていたらしい、ジェームズ・スチュワート。
監督は、名匠ビリー・ワイルダーだけど、
配役が不満で真面目に観た記憶がない。


1902年2月生まれのリンドバーグが、
この冒険に挑んで成功したのは、1927年5月20日。
33時間33分、たったひとりで飛行機を操縦してパリにたどりつく。
無線もコンピューターもない時代の飛行機である。
リンドバーグは、25歳。
のっぽで、超ハンサムな青年である。
この若さだからこそ出来た冒険なのに、
分別盛りの中年男が演じたら、冒険の意味が全然違うだろうが、
何を考えてるんだ! と20年前だったか、30年前だっか、
ビデオを観たわたしは、大憤慨したのだった。


空にあこがれた変人の頂点に、ハワード・ヒューズがいる。
20世紀を代表する大富豪というだけでも興味津々だが、
飛行機が好きで、ほとんど狂気じみた情熱を飛行機に注ぎ、
莫大なお金をかけた超特大の、
ばかげた木製の飛行艇なんかをつくっている。
テストパイロットまがいのことをして、瀕死の重傷も負っていて、
ハリウッドに乗り込んで、つくる映画が飛行機もの。


しかし、彼をモデルにしたレオナルド・ディカプリオ主演の
『アビエイター』には、がっかり。
それほどまでに、彼をとりこにした飛行機の魅力が、
全く表現されていない。
映画をつくった人は、飛行機の魅力を知らない人らしく、
彼と女優のスキャンダラスな女優遍歴のほうに、重点を置いている。


女をとっかえひっかえする人は、
もとから女に興味がなく、冷淡なんだと思う。
自分の存在価値をひけらかすために、女優をくどく男というのは、
いつの世にもいるじゃないの。
だから、女に重点を置いても、ハワード・ヒューズという男が、
わからない。
第一、ディカプリオには、飛行気乗りのイメージがない。
ディカプリオは、飛行機乗りに多い、浮世離れした男ではなく、
現実的で生々しい男臭い男だ。
明らかなミスキャスト。


考えてみたら、ハリウッドと空って対極にある。
根っから飛行機が好きな人間は、
基本的に人間嫌いな気がする。


女にもてたくてとか、収入がいいからとか、
かっこつけたくて、自家用ジェット機を買ったり、
パイロットになる人間と、ほんとの飛行機好きは、
180度別の種類の人間であることは、
いまさらいうまでもないか。

空について書き出すと、
ただのミーハーになってしまう、
スーでした。


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コメント 1

わかるなぁ~
浪漫と誇示は違うもんね。
目もくれず没頭している男に女は弱い・・・
そこが解らないかなぁ~男達よ。(笑)
by (2007-11-07 07:51) 

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